足の指が腫れていた。ある日、帰宅すると右足に違和感があった。靴下を脱いで様子を見てみたところ、右足の親指が全体的に、少し膨張して赤くなっていた。触ると熱を帯びており、ぶよぶよとしていて、痛みがあった。私は部屋着に着替え、患部の観察を開始した。
中心部は、右足の、親指の、爪の右下であった。私には手でも足でも爪の周辺をいじる悪癖がある。このあたりをいじっただろうか、と記憶を辿ったところ、前日、右足の、親指の、爪の右上あたりの硬い皮が気になって手で取り除こうとしたことを思い出した。
先に言うと、私は知っている。手足の皮の硬くなっている部分は、放っておけば新陳代謝によって柔らかい皮へと生まれ変わる。だから放置するのが正しい対策なのだ。硬い皮を取り除く行為は、やがてより硬い皮が作られてしまうので、長期的には逆効果なのだ。
知っていても、私は同じ過ちを繰り返す。硬い皮を、指でむしる。取れかけたその皮を引っ張ると、皮はすぐには千切れず、爪と肉の間を裂いてゆく。この時点で痛みが出て後悔し始めるが、後には引けない。さらに引っ張り、その皮が取れる頃、裂け目は爪の下部まで到達している。
恐らくこの裂け目から菌が侵入したかして、腫れたのだ。しかし私は知っている。数日後、このあたりからは膿が出て、さらに数日すれば、この腫れは治まる。だから放置すればよい。果たして、膿は出て腫れは治まりつつある。肉体の自己治癒力に感謝である。