いつもはしない、できればしたくないこと

台風が来た。平日だった。かつての私であれば、それだけを理由に休みを取ったし、予定はキャンセルした。何しろ相手は台風なので、人間の都合などお構いなしだ。それに対応するのであれば、他の人間の都合になど構っていられない。私は私の都合だけを考えたい。

現在、私は大人になった。少しは社会的立場を得た。守るべきものもできたし、何より世間を知った。そんな私は、台風の日に予定通り外出した。過去の私がこのことを知ったら何と言うだろう。愚かしいと笑うだろうか、老いさらばえたと嘆くだろうか。

案の定、苦労をした。傘を差しても雨に濡れたし、多くの人で電車は混雑した。特に夕方になると風雨は強まり、電車は遅延し、混雑は加速した。ひどく待たされ、やっと乗れた電車内は押し合いで、その電車も速度は遅く、いつもより時間がかかった。

分かっていたから、外出は嫌だったのだ。それでも私は予定をこなした。約束した相手の方々に迷惑をかけずに済んだ。予定通りのことをしただけなので、誰からも褒められることは無かったが、私だけは過去の私からの成長を思って自分で自分を褒めた。

幸いだった。電車は止まらなかったし、突風で何かが飛来して怪我をすることも無く、大雨で道が水浸しになり足を取られることも無かった。何しろ相手は台風なので、無事で済んだのは台風の気まぐれにすぎない。ありがとう台風。今後もお手柔らかに。

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