ただただ髪の毛を切っていただきたいだけなのです

髪の毛を切った。私の髪の毛はいわゆる天然パーマで、ある程度の長さになると癖が出始めて丸まってくる。それ自体は特に問題ではない。しかしこの髪の毛が耳くらいの長さになった時、どういうわけか帽子のツバのように真横に飛び出し始める。それが恥ずかしい。だから大抵、この長さになる前に髪の毛を切るようにしている。

実は一か月くらい前から「髪の毛が伸びてきたな、そろそろ切りに行かないとな」と思っていたのだが、行動を起こさずにいた。その間に、もうすぐ真横に飛び出しそうだった髪の毛は、明らかに真横に飛び出している髪の毛へと成長し、もはやヘアブラシでは太刀打ちできない状態となった。私は重い腰を上げた。

腰が重い理由は、私自身が定めたルールによる。それは『毎回、新しい床屋へ行く』というものだ。私は床屋における雑談が苦手である。しかしどの床屋も、なぜか数か月前に1回だけ訪れた客の顔を覚えていて、なぜか2回目にはやたらと話しかけてくる。それが嫌で私は毎回、新たな床屋を探すのである。

床屋も、どこでも良いというわけではない。私なりに、入ろうと思う床屋の条件がいくつかある。ここでは詳しく説明しないが、店名や店構え、掲示物や陳列物などだ。その条件を満たす床屋を探し当てるのに苦労する。やっと見つけても、その床屋が完全予約制で入店を断られたりする。ちょっとした探検である。

不思議なもので、いったん入店できてしまえば、床屋の技術面や価格面などで不満を覚えたことは1回も無い。どこでも丁寧な仕事ぶりで、どこでも似たような価格である。だから知らない床屋へ入ることは怖くないのだ。私にとっては、少し知っている床屋の雑談の方がよほど怖いのである。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA