今の電子機器、特にいわゆる黒物家電は中身がほとんどパソコンと変わらない、というような話を聞く。だから昔のように、電源を入れてすぐ使用開始、とはいかなくなった。どうやら内部的にOSが起動しており、それが完了するまで待たされるようなのだ。
古い機械は叩けば直る、とは誰が言い始めたのかは知らないが、広く信じられていた言説である。そして実際に、古い機械の調子が悪くなった際、叩くことで事態が改善する場合があったようだ。父が叩いても効果は無いが、母が叩くと直る、なんて話も語られていた。
週の中ごろ、テレビが不調となった。画面は映るが音は出ず、リモコンの効きも悪い。ようやくリモコンで電源のオフ・オンを実施したら、今度は画面が真っ暗のまま耳に刺さるような高音が鳴り始めて止まらなくなった。壊れたのかもしれない、と思った。
先述の通り、今の機械はパソコンだから、叩けば不調が進行するだけだろう。パソコンの不調を直す手段といえば、再起動である。私はテレビの電源ケーブルをコンセントから抜き、少し待ってから差し直した。すると、テレビは直った。普通に使えて、少し不気味だ。
電車で、スマートフォンを叩き続ける中年女性を見たことを思い出した。きっと、彼女のスマートフォンは不調で、どうにかしたかったのだろう。再起動した方が直すのには効果的だろうとも思うが、叩いて何とかしようとする彼女の気持ちも、分かるような気がした。